pluto


一日お休みだったので、名古屋シネマスコーレにて「太陽」を観てきました。
イッセー尾形さんの、「主人公」のそっくりぶりが話題になっているアレです。
上演30分前に劇場に着いたら、すでに補助席しかない状態でした。連日大入り。
まだ銀座と名古屋でしか封切られていないこの作品、来週辺りから続々と全国の映画館でも上映されるようです。

面白かった、と映画館を後に出来たのは、この映画が日本人ではない監督の指揮で撮られたものだからなのかなあ、と思いました。
わたし個人(もしくは、戦争を知らない世代であり少しでも昭和という時代に生きた自覚のある年代)の、「主人公」に対する思い入れと、アレクサンドル・ソクーロフ監督のそれの、温度の近さ、という意味で。

つまりロシア人である監督がとても真摯に、そして驚異的な親密さを持って、彼という存在に向き合っているということでもあるわけで。
これが日本人監督だったら、そうはいかなかったんじゃないかなあ。
もっと個人的な感情や情報や感傷が入り混じったものになって、もっと多くの違った感情でわたしは揺さぶられたに違いないと思うのです。
映像はひたすら美しく、静謐で、幻想的。BGMのクラシックは映画全編に漂う緊密感をさらに高め、世界に引き込んでいきます。
そこに時折挟まれる、イッセー尾形さんの絶妙の間での「あっ、そう」に、くすぐられるようにして観客は笑ってしまうのです。また前評判通りよく似ている。後姿まで似せているって凄い。彼の存在の重さと希薄さがよく伝わってきました。
印象的だったのは桃井かおりさん。最後のシーンのあの表情。グレイッシュトーンの画面の中に落とされた朱赤の挿し色のように鮮烈で、ちょっと忘れられません。

追記:あともう少し。

バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲

バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲

効果的に流れたのは名曲、無伴奏チェロ組曲第五番。
チェロの音色がこの映画にぴったりでした。
映画の演奏と同じ、ロストロポーヴィチVer.で。


ちなみにこのエントリのタイトルのplutoとは冥王星のこと。
専門的な話は避けますが、太陽に冥王星がタイトにアスペクトを取ったようなイメージの映画だな、と思ったので。わたしの中だけのイメージですみません。